
【相続】「長男が全部相続すりゃあええ」|令和の時代になお残る家督相続の考え方
ど〜も!行政書士の大川です。 私は名古屋市中川区で、相続手続きや遺言書作成、離婚協議書の作成などのご相談をお受けしています。 私はこれまで一度だけ、遺言書に関するセミナー講師を務めたことがあります。とある郊外の老人会の方 […]

ど〜も!行政書士の大川です。
私は名古屋市中川区で、相続手続きや遺言書作成、離婚協議書の作成などのご相談をお受けしています。
私はこれまで一度だけ、遺言書に関するセミナー講師を務めたことがあります。
とある郊外の老人会の方向けのセミナーで、20名程度がいらっしゃったでしょうか。
遺言書を作成するメリットや、遺言書がない場合にどのような問題が起こる可能性があるのか、そんなお話をしていたときのことです。
参加者のおひとりから、こんなご意見をいただきました。
「昭和の時代には遺言書なんてなかった」
「遺言書なんてなくても、長男が全部相続すりゃあええ」
……今、令和だよ!?
思わず心の中でツッコミを入れてしまいました。
※ちなみに、遺言書の制度は明治時代からあります。
昭和どころではありません…
もちろん、その場ではきちんと現在の相続制度についてご説明しましたが、未だにこうした考え方が残っていることに、少々驚いたのを覚えています。

とはいえ、この方が特別変わった考え方をお持ちだったというわけではありません。
かつての日本には、「家督相続」という制度がありました。
家督相続とは、簡単にいうと、戸主という家の代表者の地位を、原則としてひとりの人が引き継ぐ制度です。
旧民法では長男が優先される仕組みになっており、家督相続によって戸主の財産も承継されていました。
家や土地を長男が継ぎ、先祖代々のお墓を守り、家を存続させていく。
そうした価値観が、長い間、日本の社会に根付いていたわけです。
しかし、家督相続制度は戦後の民法改正によって廃止され、昭和23年から現在につながる相続制度が始まりました。
つまり、家督相続が廃止されてから、もう80年近くが経過しているのです。
現在の法律では、長男だからといって、ほかのきょうだいより多く相続できるわけではありません。
たとえば、父親が亡くなり、相続人が長男、二男、長女の3人だったとします。
母親はすでに亡くなっており、遺言書もない場合、3人の法定相続分はそれぞれ3分の1です。
長男が実家に住んでいたとしても、家業を継いでいたとしても、長男であるという理由だけで相続分が増えることはありません。
もちろん、相続人全員が納得しているのであれば、長男がすべての財産を相続することも可能です。
問題は、長男が全部相続することを、家族全員が当然だと思っているとは限らないことです。
親御さんは「うちは昔から長男が家を継ぐものだから」と考えていても、二男や長女はそう思っていないかもしれません。
反対に、親御さんが長男に実家を継いでもらいたいと考えていても、当の長男は
「いやいや、俺は実家に戻るつもりなんてないよ」
と思っている可能性だってあります。
今は進学や就職をきっかけに地元を離れ、そのまま別の地域に生活の基盤を築く方も珍しくありません。
長男だからという理由だけで、実家や田畑を引き継ぎ、管理していくことを負担に感じる方もいらっしゃるでしょう。

また、親御さんの介護を長年担ってきたのが長女だった場合はどうでしょうか。
仕事や家庭の都合をつけながら何年も介護を続けてきたのに、親御さんから「財産は長男に全部やる」と言われたら、納得できない気持ちになるのも無理はありません。
もちろん、介護をしたからといって必ず相続分が増えるわけではありませんが、一定の要件を満たせば寄与分が認められる場合もあります。
相続は、単純に生まれた順番だけで割り切れるものではないのです。
ここで、ひとつお伝えしておきたいことがあります。
私は、長男が実家を継ぐことや、ほかのきょうだいより多く財産を相続すること自体が悪いとは思っていません。
家業を守ってきた方もいらっしゃるでしょうし、親御さんと同居して生活を支えてきた方もいらっしゃるでしょう。
それぞれのご家庭には、それぞれの事情があります。
ただ、「長男だから当然」という考え方だけで、ほかの相続人の気持ちや権利を置き去りにしてしまうことには問題があると思うのです。
では、長男にすべての財産を相続させたいと考えている場合、どうすればよいのでしょうか。
そこで登場するのが遺言書です。
遺言書を作成しておけば、誰にどの財産を相続させたいのか、ご自身の意思を明確に残すことができます。
ただし、遺言書に「長男に全財産を相続させる」と書いておけば、すべて解決するというわけではありません。
子どもには原則として遺留分という、法律で保障された最低限の取り分があります。
そのため、ほかの子どもから遺留分侵害額請求がなされる可能性もあります。
たとえば、主な財産が実家の土地と建物だけだった場合、長男が不動産を相続できたとしても、ほかのきょうだいに支払うお金を用意できず、困ってしまうことも考えられます。
だからこそ、遺言書を作成する際には、財産の内容や家族関係を整理し、遺される方々のことも考えておく必要があるのです。
また、遺言書とは別に、ご自身がなぜそのような財産の分け方を希望しているのか、ご家族に伝えておくことも大切です。
「長男だから」という一言だけでは伝わらない思いも、きちんと言葉にすれば理解してもらえるかもしれません。

冒頭の老人会での出来事に話を戻します。
あのとき、
「長男が全部相続すりゃあええ」
とおっしゃった方にとっては、それが長年慣れ親しんできた、ごく自然な考え方だったのでしょう。
法律が変わったからといって、人の価値観まで一斉に変わるわけではありません。
ただ、相続するのは親御さんではなく、遺されたご家族です。
親御さんにとっての当たり前が、子どもたちにとっても当たり前とは限りません。
「うちは長男が継ぐから大丈夫」
そう思っていらっしゃる方にこそ、一度、ご家族の考えを聞いてみていただきたいなと思います。
令和の相続に必要なのは、家を継ぐ人を決めることだけではなく、残される家族が納得できる形を考えることなのではないでしょうか。
行政書士シオン法務事務所では、遺言書の作成支援や相続手続きに関するご相談を承っております。
「長男に実家を残したいけれど、ほかの子どもたちのことも気になる」
「自分の希望する財産の分け方を遺言書に書けるのだろうか」
など、ご家庭によってお悩みはさまざまです。
遺言書は、単に財産の分け方を決めるだけでなく、ご自身の思いをご家族に伝えるためのものでもあります。
ご家族の状況やご希望をお伺いしながら、遺言書作成に向けた準備や手続きをサポートいたします。
お気軽にご相談くださいね。
ではまた!
行政書士 大川

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