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【相続・夫婦関係】籍を抜かなかった妻と、籍を入れなかった妻|夫の遺産は誰のもの?

ど〜も!行政書士の大川です。

私は名古屋市中川区で、相続手続きや遺言書作成、離婚協議書の作成などのご相談をお受けしています。

突然ですが、みなさんに質問です。
20年間別居している妻と、20年間一緒に暮らしている内縁の妻。
夫が亡くなった場合、財産を相続できるのはどちらでしょうか?

「20年も別居していたら、もう夫婦とは言えないのでは?」
「ずっと一緒に暮らしていた人が相続するのが自然じゃない?」

そんなふうに思われる方もいらっしゃるかもしれません。
20年間別居していたら、「夫婦関係が破綻している」と判断される可能性がありますし、20年間同居して生計を共にしていれば「内縁の妻」という呼ばれ方をすることもあります。

しかし、法律上の答えは少し違います。
今回は、法律上の夫婦と内縁関係にある夫婦の相続について、考えてみたいと思います。

たとえば、こんなご夫婦がいたとしましょう。

夫のAさんと妻のBさんは、結婚して30年。
結婚当初から関係はあまり良くなく、結婚10年目に起きた大きな夫婦喧嘩をきっかけに、別居することになりました。
その後、夫婦関係が修復することはなく、20年間ほとんど連絡も取っていません。
お互いにどこで何をしているのかもよく知らず、事実上、他人のような生活を送っていました。
ただし、離婚届は提出していません。

一方、Aさんには20年間生活を共にしてきたCさんという女性がいました。
Cさんとは婚姻届を出していませんが、同じ家に住み、家計を共にし、 Aさんの晩年はCさんが献身的に介護をして看取り、周囲からも夫婦として認識されていました。
Aさん自身も、人生のパートナーはCさんだと思っていたことでしょう。

さて、Aさんの財産を相続する権利があるのは、BさんとCさんのどちらでしょうか。

※Bさん、Cさん双方とも Aさんとの間にお子さんがおらず、養子縁組等もしていません。
Aさんはひとりっ子で、ご両親や祖父母など直系尊属は亡くなっています。
遺言書もありません。

Aさんが亡くなったあと、CさんはAさんの預貯金の解約に行くため、銀行に行きました。
そこで行員から気まずそうに言われたのは、

「Cさんは相続人ではありませんので、相続人としての解約手続きができません」

という言葉です。
そう、先ほどの正解は、20年間別居していた法律上の妻、Bさんなのです。

今回のケースでは、Aさんに子どもや兄弟姉妹などの相続人がおらず、両親も亡くなっているため、Bさんが唯一の法定相続人となります。
つまり、20年間ほとんど顔を合わせていなかったBさんが、Aさんの遺産をすべて相続することになるのです。
民法では、被相続人の配偶者は常に相続人になると定められています。
ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係にある夫または妻のことです。

つまり、夫婦仲が良いか悪いか、一緒に暮らしているかどうか、最後に会ったのが何年前なのか、といった事情は、原則として相続権の有無には関係ありません。
20年間別居していても、30年間口をきいていなくても、離婚が成立していなければ法律上の配偶者です。
もちろん、相続放棄をした場合などは別ですが、夫婦関係が破綻しているという理由だけで相続権がなくなるわけではありません。

一方、20年間Aさんと生活を共にしてきたCさんには、法定相続権がありません。
どれほど仲が良くても、どれほど献身的に支えてきても、婚姻届を出していなければ法律上の配偶者にはならないからです。

そ、そんな……
なんだか不思議な感じがしますよね。

では、Aさんが生前に

「自分の財産は全部Cさんに渡すからな」

と話していた場合はどうでしょうか。
Cさんはその言葉を支えに、Aさんの介護を行ってきました。
しかし、残念ながら、そう話していた『だけ』では、Cさんが当然にAさんの遺産を受け取れるわけではありません。
どれだけ長く生活を共にしていても、Cさんは法定相続人にはならず、Aさんの遺産を当然に取得する権利はないのです。

たとえば、AさんがCさんと暮らしていた自宅もAさん名義だった場合、その自宅はAさんの相続財産になります。
Cさんに所有権が移るわけではありません。
長年暮らしてきた家だからといって、当然に住み続けられるとは限らないのです。

ただし、建物の権利関係や使用貸借などの事情によっては、一定の居住が認められる場合もあるため、直ちに退去しなければならないという意味ではありません。

では、内縁の妻に財産を残したい場合、どうすればよいのでしょうか。

代表的な方法は、遺言書を作成しておくことです。
法律上の相続人ではないCさんにも、遺言によって財産を遺贈することができます。

ただし、ここでも注意が必要です。
法律上の妻Bさんには遺留分があります。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の遺産の取得分のことです。

仮にAさんが「全財産をCさんに遺贈する」という遺言書を残していたとしても、Bさんから遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
そのため、遺言書を作成する際には、誰が相続人になるのか、どのような財産があるのかを確認し、遺留分についても考えておく必要があります。

なお、内縁関係にある方が亡くなり、法律上の相続人が誰もいない場合には、残されたパートナーが「特別縁故者」として家庭裁判所に財産分与を申し立てる制度もあります。

ただし、これは相続とは異なる制度です。
一定の手続きを経て家庭裁判所に認められる必要があり、必ず財産を取得できるわけではありません。

また、今回のお話は、内縁関係にある方だけに関係するものではありません。
長年別居している方にとっても、決して他人事ではないのです。

たとえば、何十年も連絡を取っていなかった夫が亡くなり、突然、相続に関する連絡が届いたとします。
夫が亡くなったことすら知らなかったのに、法律上は自分が相続人になっている。
しかも、相続するのは預貯金や不動産といったプラスの財産だけではありません。
借金などのマイナスの財産も、原則として相続の対象になります。
相続したくない場合には相続放棄という選択肢もありますが、原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

「もう何十年も会っていないから、自分には関係ない」

そう思っていたとしても、戸籍上の婚姻関係が続いている限り、相続とは無関係ではいられないのです。

結婚することも、結婚しないことも、離婚せずに別居を続けることも、それぞれの方の選択です。
私自身、婚姻届という一枚の紙だけで、人と人との関係の深さが決まるとは思っていません。

しかし、法律上の権利については、その一枚の紙が大きな意味を持つことがあります。
20年間顔を合わせていない人に相続権があり、20年間毎日顔を合わせてきた人には相続権がない。
少し極端に聞こえるかもしれませんが、これが法律上の婚姻関係と内縁関係の大きな違いです。

そして、相続の問題は、亡くなってから初めて考えるのでは、できることが限られてしまいます。
特に、内縁関係にある方や、長年別居している配偶者がいる方などは、ご自身が亡くなった後、誰にどのような権利が生じるのかを、一度確認しておくことが大切です。

行政書士シオン法務事務所では、相続に関するお悩みをお受けしたり、遺言書作成についてのお手伝いをしています。

「今のパートナーに財産を残したい」
「長年別居している配偶者がいるけれど、相続はどうなるのだろう」
「自分の家族関係では、どのような遺言書を作ればよいのだろう」

こうしたお悩みは、ご家庭によって事情が異なります。
ご自身の意思をきちんと形にし、遺された方が相続で困らないようにするためにも、まずは現在の状況を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

人の気持ちは戸籍には書かれていません。
だからこそ、大切な人への思いを、法律上もきちんと伝わる形にしておきたいものです。
お気軽にお声掛けくださいね。

ではまた!

行政書士 大川

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