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【遺言】遺言で子どもの認知ができる?|もしその「遺言」を家族が隠したら…

ど〜も!行政書士の大川です。

私は令和5年度の行政書士試験に合格し、令和6年5月に開業しました。
現在は名古屋市中川区で、相続手続きや遺言書作成、離婚協議書作成などを主な業務として、ひとりで行政書士事務所を運営しています。

行政書士試験の勉強で民法を学んでいたときのことです。
思わず二度見、いや五度見くらいしてしまう条文がありました。

【民法第781条第2項】
「認知は、遺言によっても、することができる。」

そのときは、遺言で認知しなきゃいけないような子どもを作るなよ……というのが率直な感想でした。
そもそも、遺言で認知するってどういう状況!?と全く想像ができませんでした。

ところが行政書士になり、相続、遺言、離婚などのお仕事を通して、本当にいろいろなご家庭があるということを知りました。
我が家もなかなか「普通」ではありませんでしたが、戸籍を確認していると、そんなことある!?が結構何回も出てきます。

【雑記】「普通の家族」って何だろう?|家族にはそれぞれの物語がある | 家族関係について, 雑記 | 行政書士シオン法務事務所
↑↑以前書いた家族に関する記事です。↑↑

そして、お客様からも色々なご事情を聞きました。

・戸籍上は夫婦だけれど何十年も別居している
・親子だけれど何十年も会っていない
・一度も会ったことのないきょうだい
・籍を入れずに長年一緒に暮らしている

「家族」と一言で言っても、その形も関係性も、本当にさまざまです。

そんな今では、
「生きている間には認知できない事情がある人もいるのかも……」
となんとな〜く想像できるようになりました。
ということで今回は、ちょっと珍しい「遺言による認知」についてのお話です。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父との法律上の親子関係を生じさせるための制度が「認知」です。
そして、先ほどの民法第781条第2項にもあるように、

「私は○○を自分の子として認知する」

という意思を遺言に残すことができるのです。

生きている間には認知せず、自分が亡くなった後に認知する。
行政書士試験の勉強をしていた頃の私は、
「一体なぜそんなことを…???」
と思ったわけですが、現実の人間関係はそんなに単純ではありません。

・すでに別の家庭がある
・子の母との間にさまざまな事情がある
・長年認知しないまま時間が経ってしまった
・家族に生前知られることで大きな問題が起こる

事情は人それぞれでしょう。
それでも、「自分が亡くなった後には、法律上も自分の子としておきたい」という意思を実現する方法が、遺言による認知です。

では、遺言書に「○○を認知する」と書いておけば、自動的に戸籍に反映されるのかというと、そんな簡単ではありません。
遺言による認知の場合、実際に認知の届出をするのは遺言執行者です。
戸籍法にもきちんと規定があります。

【戸籍法第64条】に、
遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添付して、認知の届出をしなければならない、とされています。
(※就職!?と思っていましたが、遺言執行者が就任してから、という意味ですね…)

つまり、遺言書に書いて終わりではなく、遺言者が亡くなった後に遺言執行者による届出が必要になるわけです。

そして、この認知は相続にも大きく関係します。
民法には、さらにこんな規定があります。

【民法第784条】
「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。」

これはどういうことかというと、認知の届出をした日から親子になるのではなく、原則として出生したときまでさかのぼって効力が生じる、ということです。
たとえば50歳になってから認知されたとしても、
「50歳から親子になりました」
ということではなく、法律上は出生時から親子だったものとして扱われるということです。
そして父が亡くなった後、遺言によって認知された場合も、相続との関係ではその子が法律上の「子」として関わってくることになります。

ただし、民法784条には
「第三者が既に取得した権利を害することはできない」
という但書もあります。
認知の効力が出生時までさかのぼるからといって、その間に生じたすべての法律関係が無条件にひっくり返るわけではありません。

では、父が亡くなった後、ほかの相続人がすでに遺産分割を終わらせていたところに、遺言によって新たに認知された子が相続人となった場合はどうなるのでしょうか。

「相続人が増えたんだから、遺産分割を全部最初からやり直し……?」

と思っていたのですが、実は、これについても民法に規定がありまして…

【民法第910条】
「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」

つまり、相続開始後の認知によって新たに相続人となった人がいる場合でも、すでにほかの相続人によって遺産分割などが行われていたときには、原則として「全部やり直してください」ではなく、その人は自分の相続分に相当する価額の支払いを請求することになります。

たとえば、夫が亡くなり、妻と子ども2人がいたとします。
家族としては当然、「相続人は妻と子ども2人だね〜」ということで遺産分割をしました。
きっと戸籍も出生まで遡って取得し、問題なかったことでしょう。
ところが、その後、遺言による認知によって新たに「子」が相続人として加わることになった……!

ドラマすぎますね。
これはなかなかの衝撃です。
「知らない人が出てきた!」
という感情的な問題だけではなく、相続人の範囲そのものに関係する話ですから、お金の問題にも直接つながります。

ただ、ここでひとつ疑問が出てきます。
たとえばこれが、公正証書遺言でも法務局に保管された自筆証書遺言でもなく、家の引き出しから出てきた普通の自筆証書遺言だったら?
そして、その存在を知っているのが家族だけだったら……?

認知される予定の子は、「父が自分を認知する遺言を書いてくれていた」ということ自体を知らないかもしれません。
父が亡くなったことさえ知らない可能性もあります。
認知の届出がされていなければ、父の戸籍を見ただけでその子の存在が分かるわけでもありません。
家族が、

「よし、見なかったことにしよう!」

とそっと隠してしまったら…?
そして今までの家族だけで遺産分割協議をして、預貯金を解約して、不動産の相続登記をしてしまったら……??

事実上、誰にも発覚しない可能性はあります。

とはいえ、やっていいわけではありません。
法務局の遺言書保管制度を利用していない通常の自筆証書遺言を発見した場合、原則として家庭裁判所で「検認」の手続をする必要があります。
勝手に「都合が悪いからこれは出さない」ということはできません。

そして、さらに怖い規定がありまして……

【民法第891条第5号】には、
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、相続人となることができない、とされています。
これを「相続欠格」といいます。
つまり、遺言書を隠した結果、自分自身が相続人としての資格を失う可能性があるという、かなり重い規定です。

ただし、遺言書を隠したという事実だけで、どんな場合でも機械的に相続欠格になるわけではありません。
判例上は、その行為について相続上不当な利益を得る目的があったかどうかなども問題になります。
とはいえ、

「この遺言を出したら認知された子が相続人になって、自分たちの取り分が減る」
「じゃあ遺言書を隠そう」

ということであれば、非常に大きな問題になり得ることは想像できると思います。

そして、ここは先ほどの民法910条とは分けて考える必要があります。
910条は、「相続開始後に認知された人がいて、すでにほかの共同相続人が遺産分割などをしていた場合にどうするのか」というルールです。

「認知するという遺言を見つけたけれど、これを隠して先に遺産分割してしまえば、あとでお金だけ払えばいいよね!」

というための制度ではありません。
遺言書の存在を知りながら、自分たちの相続分を確保するために意図的に隠したのであれば、そもそも遺言書の隠匿による相続欠格という別の問題が出てきます。

世の中には、「誰も調べなければ分からないこと」というものがあります。
今回のようなケースも、自宅に保管されていた自筆証書遺言を発見した人が隠してしまえば、その存在がすぐにどこかの役所へ自動通知されるわけではありません。
だから「物理的にできるか」と聞かれれば、できてしまうケースはあると思います。

しかし、「できる」と「やっていい」は全く別の話です。
数年後に遺言書の存在が発覚したり、認知される子がその事実を知ったりすれば、すでに終わったと思っていた相続手続まで大きな問題になる可能性があります。


ここまで考えて、私にはひとつ思うところがあります。
もし本当に、

「自分が亡くなったら、この子を認知してほしい」

という重要な意思を遺言に残すのであれば、自筆証書遺言で、さらに自宅の引き出しに入れておくだけで大丈夫???

その遺言を最初に見つけるのは誰なのでしょうか。
その人にとって、その遺言は「都合のいい内容」なのか「都合の悪い内容」なのか……

遺言書というものは、遺言者本人が亡くなってから効力を発揮するものです。
そのとき本人はもう、

「ちゃんと私の遺言を出してください!」

とは言えません。
ここでできる対策としては、

・公正証書遺言にする
・法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する
・信頼できる遺言執行者を指定しておく

などです。
「書くこと」だけではなく「自分が亡くなった後、確実に実現される状態にしておくこと」まで考えておく必要があります。

行政書士試験の勉強をしていたころの私は、
「遺言で認知するってどういうこと!?」
と思っていました。
それから数年が経ち、行政書士としていろいろなご家庭を見るようになった今では、
「まあ、そういうこともあるよね……」
と思います。

法律を勉強していると、「なんでこんな制度があるんだろう?」と思うものがたまに出てきます。
でも、その制度が存在するということは、それを必要とする人や家族が、現実の社会にいるということなのでしょう。

家族の事情は、外から見ただけでは分かりませんよね。
遺言書は単純に、「預金は長男に」「自宅は妻に」と財産の分け方を書くためだけのものでもありません。
自分が亡くなった後に、「何を、誰に、どう残したいのか」、という意思を実現するためのものです。
だからこそ、遺言書を作るときには内容だけではなく、

「この遺言は、自分が亡くなったあと、本当に実現されるだろうか?」

というところまで考えて作っていただければと思います。

行政書士シオン法務事務所では、遺言書作成のサポートを承っております。

・誰にも言えないようなご事情をお持ちの方
・複雑な家庭環境で相続がご不安な方
・家族のために遺言書を作っておきたい方

詳しくお話を伺ったうえで、
「自分が亡くなったあと、この遺言をどう実現してほしいのか」
というところまで一緒に考え、遺言書作成のお手伝いをさせていただきます。
まずはお気軽にお声掛けくださいね。

ではまた!

行政書士 大川

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