
【相続】父の遺品から「知らない女性に全財産を遺贈する」という遺言書が出てきたら?|遺言書と遺留分の関係
ど〜も!行政書士の大川です。 亡くなった父の遺品整理をしていたときに、公正証書遺言が出てきたとします。「あら、お父さんいつのまに遺言書なんて書いてたのかしら…」と中身を確認してみると…… 「全ての財産を○○(全然知らない […]

ど〜も!行政書士の大川です。
亡くなった父の遺品整理をしていたときに、公正証書遺言が出てきたとします。
「あら、お父さんいつのまに遺言書なんて書いてたのかしら…」
と中身を確認してみると……
「全ての財産を○○(全然知らない女性の名前)に遺贈する」
そこには、家族の誰も知らない女性の名前が書かれていました。
え!?待って!!
どういうこと!?!?
てか○○って誰やねん!!???
家族一同大パニックです。
こんなドラマみたいな話も、現実に起こる可能性はゼロではありません。
今回ももちろんフィクションですが、こんなちょっと衝撃的なケースを考えてみたいと思います。
登場人物は、
・被相続人:父
・相続人:母(父の妻)、長男、長女
・遺言に書かれていた受遺者:家族が誰も知らない女性
とします。
お父さん…………

まず、その女性に全部渡さなければいけないのか?
というところが気になりますよね。
結論からいうと、有効な遺言であれば、原則として遺言の内容は尊重されます。
「家族の知らない女性だから無効!」ということにはなりません。
そもそも、誰にどの財産を遺すのか、誰に遺贈するかというのは、原則として遺言者が自由に決めることができます。
今回のような
「全ての財産を○○さんに遺贈する」
という遺言は、法律上は「包括遺贈」と呼ばれるものです。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています。
つまり、この女性は単純に「財産だけ全部もらえる人」というわけではありません。
場合によっては父が残した債務についても関係してくる存在ということになります。

では、家族は何ももらえないのでしょうか?
ここで出てくるのが「遺留分」です。
「○○に全部あげる」と書いてあっても、遺留分はまた別の問題になります。
今回の相続人は、母(妻)、長男、長女の3人。
この3人は、いずれも遺留分を持つ相続人です。
父が「全財産をこの女性にあげる!」と遺言を書いていたとしても、一定の範囲で、相続人には遺留分が認められています。
遺留分は、一定の相続人に保障されている「最低限の取り分」のことです。
(※なお、兄弟姉妹には遺留分はありません)
今回のように、相続人が配偶者と子の場合、遺留分を算定するための財産の価額に対する遺留分の割合は、原則として2分の1。
そして、それを法定相続分で分けます。
そのため、単純化すると、
・母(妻):法定相続分2分の1 → 遺留分は4分の1
・長男:法定相続分4分の1 → 遺留分は8分の1
・長女:法定相続分4分の1 → 遺留分は8分の1
となります。
たとえば、父の遺産が1,000万円あり、他に考慮すべき事情がない場合
・母は250万円
・長男は125万円
・長女は125万円
上記の金額が、それぞれの遺留分の目安になります。
ただし、実際の遺留分は、単純に「遺産総額×○分の○」だけで決まるわけではありません。
生前贈与や相続債務なども関係してくるため、具体的な財産状況を確認して計算する必要があります。

では、この知らない女性に「お父さんが亡くなりました」と連絡する必要があるのでしょうか?
ここも気になるところですよね。
公正証書遺言だからといって、公証役場からその女性に自動的に連絡が行くわけではありません。
また、公正証書遺言について、遺言執行者が指定されているかどうかによっても、その後の手続きは変わってきます。
遺言執行者がいる場合には、遺言の内容を実現するために、受遺者や相続人への通知などを含め、遺言執行に必要な手続きを進めていくことになります。
では、遺言執行者もいない場合。
相続人としては、
「いやいや、そんな知らない女性に私たちからわざわざ連絡したくないんだけど……」
となるかもしれません。
ただ、だからといって、その女性の存在を無視して相続手続きを進めてしまうのは適切ではありません。
今回の遺言は
「全ての財産をその女性に遺贈する」
という内容ですから、まずは遺言の内容と、遺言執行者の有無を確認することが重要です。
そして今回、相続人にとって非常に重要なのが、「全部渡す」前に、遺留分をどうするか考えることです。
「遺言に書いてあるから、全部その女性に渡して、私たちは諦める」
という必要はありません。
遺留分を侵害されているのであれば、遺留分侵害額請求を検討することができます。
遺留分侵害額請求は、遺言そのものを取り消す制度ではなく、遺留分を侵害された相続人が、遺贈を受けた人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する制度です。
つまり、
「お父さんがその女性に財産を残したこと自体は否定しないけど、私たちの遺留分まで全部なくなるわけではないんやで…」
という話です。
しかし、これには期限があります。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する遺贈などがあったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。
また、相続開始から10年を経過した場合も同様です。
「そのうち考えればいいや」と放置するのは危険です。

では、こういった相続の場合、誰に相談すれば良いのでしょうか?
このケースなら、私は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
遺言書を見つけた段階で、
・この遺言は本当に有効なのか?
・遺言執行者は誰なのか?
・遺産はいくらあるのか?
・遺留分はいくらになるのか?
・受遺者である女性に、誰がどのように連絡するのか?
・遺留分侵害額請求をするなら、どのように請求するのか?
など、確認することがたくさんあります。
特に、相手が家族にとって全く面識のない人で、しかも全財産の包括遺贈となると、話し合いだけでスムーズに解決するとは思えませんよね…
遺留分侵害額請求そのものは、金銭の支払いを求める法的な請求です。
相手との交渉や、話し合いがまとまらず調停・訴訟などに発展する可能性がある場合には、弁護士に対応してもらうことが適切です。
遺品整理をしていて突然、
「全財産を知らない女性に遺贈する」
という公正証書遺言が出てきたら、家族としてはめちゃめちゃびっくりすると思います。
「お父さん、一体何があったの……?」
と思ってしまうのも無理はありません。
でも、まず確認したいのは、「その女性が誰なのか」ということよりも、
「その遺言がどのような内容で、相続人にどのような権利が残されているのか」
です。
遺言が有効であれば、その内容は原則として尊重されます。
しかし、だからといって、配偶者や子どもが当然に何も受け取れなくなるわけではありません。
遺留分という制度があるからです。
「遺言書が見つかった=その通りに全部分けなければいけない」
ではありません。
まずは遺言書の内容、遺言執行者の有無、財産と債務の状況を確認し、必要であれば早めに弁護士へ相談する。
これが、このケースでの大切な第一歩になります。
ちなみに…
今回は全く知らない女性への遺贈でしたが、これが家族間で起こることもあります。
今回の登場人物に当てはめて考えると、父の遺言書に「財産は全て長男に相続させる」と書いてあった場合、母(妻)と長女には遺留分があります。
そのため、遺留分を侵害されているのであれば、長男に対して遺留分侵害額請求をすることができます。
行政書士シオン法務事務所では、相続手続きや、遺言書作成サポートを承っております。
複雑なご事情がありお手続きがなかなか進められない方や、家族関係にご不安がある方、是非一度お声掛けくださいね。
ではまた!
行政書士 大川

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